院長コラム

2015年


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Vol.151 2015/12
冬至に日に

一年で最も昼が短い今日は、何かもの寂しい気持ちになる日です。しかし、明日からは一日一日が長くなっていき、またあの夏の日に向かっていきます。

薄暗さの中では頭も心もスキッとしない。これは誰でも同じです。私は医師とは、目の前にいる方の暗闇を少しでもとり去る職業であると思います。薬を処方する、手術をする、会話をする、色々な方法を用います。

私のクリニックも今年は、私の学問の師のお一人である、田平 武先生をお招きして、薄暗い状態にある脳の働き(昧神“まいしん”)状態にある認知症に光を差し込むことができるように、もの忘れを早期に発見し、予防して治療をする、もの忘れ外来(昧神外来)を開始しました。

まもなく新しい年になります。明るさを求めて頑張る、皆さん、どんなに辛くてもこの気持ちを忘れずに生きましょう!

 

Vol.150 2015/11
田老町・宮古の地に立って ~大森医師会災害救急視察~

10月31日から11月1日にかけて、大森医師会では被災地に災害救急の視察に行ってきました。田老町はあの日TVに放映された、「あの大津波」がいくつかの防潮堤や林を乗り越えて民家を襲ったあの街です。

海岸には大津波に打ち破られた4.5mの防潮堤のブロックが、そのまま無残にも何か所にわたってそのまま残されていました。流れ来る津波の濁流(全てヘドロだったそうです)を動画撮影されていたホテルの社長の声が、今もそこに流れているような気がしました。

映像上で、忘れ物を取りに家に戻って逃げ遅れて命を落としてしまった方を撮影したお寺の高台に立つと、当日の迫りくる轟音と恐怖が、私のこの胸にも押し寄せてきたような気がしました。濁流に奪われた方々のご冥福をあらためてお祈りいたしました。

宮古では、多数の腎透析を行っていらっしゃる後藤医院をみせていただきました。診療所の1階部分、1.75mのところまで津波が来たにもかかわらず、阪神淡路地震の後から巨額の自費を投じて病院4Fに自家発電機を設置してこられた先見の明が、暗かった街を照らし続けたことに感動しました。

大森で、大田区で、東京で大震災が起きてしまった時、何ができるか? 迫りくる自然の力には何もできないかもしれません。しかし、少しでも踏ん張れるように、常日頃から皆さんとともに考え、準備をまた一歩すすめていかなくてはならないと思いました。

Vol.149 2015/10
地方のパワー

日本早期認知症学会が10月10 - 11日にかけて新潟であり参加してきました。学会は盛会のうちに終了し、早期の認知症に対する他職種の方々の情熱に感動しました。

新幹線を下りてから、会場と宿泊所を往復しました。ローカル電車、バス、タクシーと、色々乗ってみました。広々とした広大な平野、信濃川河口近くの大きな、そしてゆっくりとした流れ。日頃東京であわただしく動いている私にとって久しぶりに自然に触れたような気がしました。

東京では土地も高価で家賃も高く、何かしたくても成し遂げられないのが現状です。東京には事務所だけおく。実際の作業や施設は地方の広い土地に建築し、広い駐車場を完備し、ここにマンパワーを集める。そしてデータ解析やmeetingは、東京でも併せて行う。

大いなる自然の中で悠々と行動し、都会の活動がそれを後押ししていく。地方の空気と力を医療にも研究領域にも取り入れていけると皆、もっと元気になれるのではないかと考えます。いかがでしょうか?

 

Vol.148 2015/09
街角でのちょっとした挨拶

キンモクセイの香りがまた心地よく漂い始めました。8月末から急に涼しくなってきてしまい、今年の夏は何かあっという間に終わってしまったような気がします。でも、キンモクセイの香りは秋の始まりを告げ、さわやかな季節の始まりをおしえてくれていると思うのがよいかもしれませんね。

往診で車を運転していると、最近特に気になることがあります。交差点を横断する人たちのことです。こちらが車を停止し、どうぞとサインを出すと、とってもいい笑顔で、ニコッと笑って、軽く会釈して渡っていかれる方もいます。しかし、左右も見ず立ち止まることもなく、歩幅を緩めることもなく、ひたすらまっすぐ歩いていく人。老若男女問わず。もちろん、笑顔も会釈もありません。車は歩行者がいらっしゃれば当然止まります。しかし道を横切る時、ロボット人間のようにまっすぐ前だけをみて歩く人間。実に異様です。小学校での交通教室、欠席していたのでしょうか?運転免許の学校に行けば、歩行者も非常に危ないことがよくわかります。

おもてなしの日本、文化と礼を重んずる国の人がこのようなことでよいのでしょうか?

欧米では必ずといってよいほど皆さんニコッとします。ちょっとした挨拶すらできない日本人が増えていることは嘆かわしい限りです。

 

Vol.147 2015/08
夏の夜の夢 ~羽生結弦氏とサラオレインさん~

フィギュアスケートの羽生結弦氏が、神のように澄んだサラオレインさんの歌声の中で華麗に舞っている姿を見ました。まさに天使が天上で舞っているように思えました。

真実を求めること、善を行うこと、美しさを追求すること、我々も求めたいものですね。二人とも若くしてこの3つをゲットしているように思えます。

しかしこの3つを求める過程には、大変な努力が必要だったと思います。私たち凡人には中々簡単にゲットできるものではないと思ってしまいます。でも我々も、いつもこれらを求めて、1つでもよいことをして、1つで美しいものに触れ、1つでも真を求めて毎日を生きることを忘れずにいたいものです。

暑い夜に見た、夏の“世”の夢に終わらせずに、私も実行したいと思います。

 

Vol.146 2015/07
集団的自衛権と永世中立国

今、日本は集団的自衛権で揺れていますね。大変な時代であると思います。

日本は70年前の苦い経験から戦争を放棄した国です。我々も戦争はしてはいけないことはよくわかっていますね。

賛成派、反対派の気持ちともよくわかります。戦争放棄の精神は堅持すべき。日本だけ攻められたら守ってくださいではもはや通らない。この両者とも本当に正しいと思います。

しかし一度、日本が攻撃された時、我々は自国を守り切ることができるでしょうか?おそらく無理であると思います。

他国へ攻め込むことはしてはけません。しかし自分の国だけは“自分で”守らなくてはなりません。私はスイス型の永世中立国を日本も目指してみてはどうかと思います。自分で自分を守る代わりに他国攻めない。皆さんはどうお考えでしょうか?

Vol.145 2015/06
言葉は最良の薬にも劇薬にもなる

毎日の外来診療の中で思うことがあります。ご家族、友人、職場の中でのコミュニケーション、特に言葉のトラブルが多い様です。

あるサラリーマンは、何故もっとやらないんだ!という上司の言葉を、叱られているととってしまった結果、鬱になっていました。もう一方の方は、同じ言葉を、叱咤激励ととり、発奮の起爆剤となり業績を上げることができたと聞きました。ある女性は、結婚後、姑から、まだ働いてるの?と言われ落ち込んでしまったとのことで来院されました。他方の女性は、同じようなことを言われて、逆に義母さんが心配していることを実感して心が温まったと聞きました。

その時その時に置かれている環境により、人の感受性は変わるのではないかと思います。言葉は生き物ですから、その環境の中でどんどん形を変え、意味を変えているのではないでしょうか?ある時は心に安らぎを与えてくれる薬に、ある時は劇薬にかわります、

私たちは、言葉の意味を考えながら生活をすることができれば、きっともう少し苦しさが減って楽しく過ごせるのではないかと思います。

Vol.144 2015/05
航空機事故に思う

このところ世界で痛ましい航空機事故のニュースを耳にます。マレーシア航空機が行方不明の事件、ドイツ機が山岳に激突した事件、どれも目にしたくないものです。

今年は日航ジャンボ機の御巣鷹山事故から30年の歳でもあります。沢山の方々の命が一瞬にして奪われる航空機事故が二度と起きないように祈るしかありません。

マレーシア機とドイツ機の事件が、事故でなく、人災、人の意志により意図的に行われた事件であるとしたら許しがたいことです。テロやうつ病の可能性がとりざたされているようですが、どちらであっても全く関係ない方々を巻き込むことは許しがたいことです。

宗教については詳しいことは知りませんが、どの宗教が一番とか、他の宗教がダメで自分たちの宗教が1番であるとの考えから、他人を道ずれにするような行為はあり得ません。まして異教徒を道ずれにすれば、その結果、神のもとに行けるなどということを許す神がいるでしょうか? また鬱だから死にたい。人を道ずれにしないと・・・とのことから、周囲の人を巻き添えにすることも許されません。逝きたい人は自分の自由です。でも人の人生までも変えてはいけません。

自分の生き方、自分の命と共に、人の生き方、人の命も大切にしなくてはならない、航空機事故を考えた時、私はそう思いました。

Vol.143 2015/04
山あり谷あり

桜が咲き誇る季節となりましたね。今年はいつもより早く咲きはじめ、少し長く楽しめたような気がします。

4月は進学や就職、環境が大きく変わる月ですね。皆さんも新しい門出、環境の変化がありましたか? 順調に動かれたかたもいらっしゃるでしょうが、反対に大変な苦境に立たれてしまった方もいらっしゃるかと思います。

苦しい時があっても、必ず良い時が来ます。帳じりが合うように人生はできているといわれます。山と谷が必ずあります。

この落差が大きいほど強くなれます。大きくなれます。谷間の深さが深いほど、打ちのめされて苦しい時間が続きます。私の外来にもこのような状況の方が沢山いらっしゃいます。しかし、そういう時はそれでいいのです。これ以上、下がらないのですから。この時こそ、次のジャンプのエネルギーを貯められる時間であると思ってみてください。

山あり谷あり、私もこれまでの人生を振り返ると、大変な山と谷があったことを思い出します。涙の時もありました。眠れないときもありました。楽しい時も、嬉しい時もありました。皆さん、私と一緒にもうちょっと前を向いて生きてみてくださいませんか!

Vol.142 2015/03
人を思うこと 想いだすこと

3月11日はあの日から4回目の日ですね。あの日あの時、私は往診車にのってクリニック近くの路上で信号待ちをしていました。道と信号が激しく動いて、風にしては強いな!?と感じました。しかし、車の揺れが異様に大きく、人々が家から道に飛び出してきて初めて異常に気が付きました。それでも往診を続け、余震で往診宅の廊下の壁につかまって移動していました。

犠牲になられた沢山方々に、あらためてご冥福をお祈り申し上げます。震災での犠牲者だけでなく、色々なご病気や事故などでご逝去された方々にもご冥福をお祈りいたしますとともに、ご家族様のお気持ちをお察しいたします。私の父も逝去して3年になりますが、やはり「今、父が生きていたら・・・」と、つい思ってしまいます。

今生きている我々は、悲しみの中ですが、この世を去られた方々のことをいつも思い、想いだしていくことが大切だと思います。忘れられてしまうことが、一番辛いことなのではないでしょうか。

すぐそこのいらっしゃる方に、心の中で話しかけてその声に耳を傾けてみてください。

Vol.141 2015/02
世界の嫌な空気

1月はフランスでテロがあり、また中東では日本人も犠牲になりました。心からご冥福をお祈りするしかありません。

私は全くの無信教者であり、イギリスに留学しているときも現地人の友人から信じられないといわれていました。イギリスは産業革命の時代にインド地方から沢山の東洋人を連れてきており、そのうちの何割かがイスラム教徒であったことから、現在もその末裔たちが、イスラム教徒であることが多いのです。現に私の友人の   パキスタン人は日本人ほど、宗教的な概念、歴史、そして対立に疎い人種はいないでしょう。それだけに今回のこのような一連の事件については、大変お気の毒であると思うことはできても、ではどのように対処していったらよいかという、深いところまでの理解と対処について意見を発することはできないように思います。

私もその点は同様で、全くわからないに等しいです。しかし、宗教は皆が幸せになるための道筋であり、自分の道が他の道に勝っているとか、どちらの道が是か非かを争うものではないと思います。どの道を通っても、みんなが幸せになれればそれでよいと思います。宗教のことで争うことはしたくないですね。

皆さん、皆で幸せになる方向を探りましょう!

Vol.140 2015/01
神に心を、人に身を

新しい歳2015年となりました。皆様よい年をお迎えになられましたでしょうか?

昔から歳を一つとる度に、白髪は増えるは、皮膚は乾いてくるは・・・等、どうしても老化が気になってしまいます。子供の頃、正月を迎えることが楽しくて仕方なかったのですが、最近は全く嬉しくないのは私だけでしょうか?

体の変化とともに、我々の心はどうでしょうか? 色々なことに疲れてしまう自分の心の動きもあると思います。でも幾つになっても、童心に戻ってキラキラと眼を輝かしていらっしゃる方も多くおられます。

健全な心は健全な肉体に宿る。自分の心から発するエネルギーの光は、自分の体がしっかりとしていなければ、弱々しくなってしまいます。今年はくよくよすることなく、宿命は神にまかせて、我々は自らの体をしっかりと維持する役目を全うし、しっかりとした心と身をもって、変えることが可能な自らの運命を切り開いていこうではありませんか。

体のことは、お任せください。くどうちあきは、今年もここにいます。

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